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あなたの夢は何ですか?

2024/11/25

月曜日、新しい1週間の始まりです。来週からの期末考査に向けて、どのクラスの授業も熱を帯びています。3年生にとっては高校生活で最後となる定期考査です。悔いのないよう万全の準備をして臨んで欲しいと思います。
先日、何気なく流れていたテレビから、耳慣れない言葉が聞こえてきました。その言葉は「ドリハラ」です。「ドリーム・ハラスメント」の省略だとのことですが、皆さんは聞いたことがありますか。私は初めて聞いた言葉だったので、少し調べてみました。教育思想家の高部大問さんによると「ドリハラ」とは「夢を強要する」ことであり、さらに言えば「夢を持てと、特に若い人に対して強要すること」だそうです。高部さんは2020年に『ドリーム・ハラスメント~「夢」で若者を追い詰める大人たち~』を出版し、若者が夢を強要されている実態や構造についてまとめています。 高部さんは(株)リクルートで新卒採用や他社採用支援業務などを担当した後、大学の事務職員に転身した方で、現在は社会福祉法人で働きながら、講演や執筆活動を続けられている方です。中学生や高校生、その保護者や教員に向けたキャリア講演活動もされています。 その高部さんがドリハラについて問題意識を持つようになったきっかけを次のように述べています。

「2014年頃から中学校や高校に講演に出かけており、そこでたまたま夢の話をする機会がありました。講演では毎回、質疑応答やアンケートを行うのですが、その回答を見れば見るほど、話を聞けば聞くほど夢を強要されている生徒たちの実態が浮き彫りになったのです。当時、出会った生徒は1万人を超えていましたが、少なく見積もっても4人に1人以上は夢の強要に苦しんでおり、これは生徒に対するハラスメントだと言っても過言ではないと考えるようになりました」

高部さんの話を聞いて、何とも複雑な気持ちになりました。と言うのも、私も普段何気なく「あなたの夢は何ですか?」などと、生徒に尋ねることがあるからです。もっとも「夢は特にありません」と返ってくることも少なくないので、最近は「夢」を「将来の目標」や「キャリアプラン」と言い換えて尋ねるようにしています。ドリハラが現実に存在するほどに、夢を持つことが難しい現代社会になってしまったのでしょうか。ワークライフバランスやウェルビーイングが重要視される現代社会においては個人の価値観は多様化し、何が正解で何が不正解か明確に示すことが難しくなっています。こうした時代(=VUCAの時代)だからこそ、私は「夢」を持つことが大切ではないかと思うのです。ただし、それは誰かに見せるためではありませんし、誰かに価をされるものではないはずです。これから自分自身の人生を歩んでいく上で、その指針となる「夢」を持つことは、その歩みを支える礎となってくれると信じています。その意味では人生の折り返しを過ぎた私にも明確な「夢」があります。ただ、それは自分自身の胸の中に秘めているもので、言葉として誰かに伝えるつもりはありません。それでも毎日の日常を過ごしていく上では、とても大きな支えとなっています。「夢」は誰かに強制されて持つものではありませんが、改めて意識しないと、見つけることさえできないかもしれません。もしかしたら「あなたの夢は何ですか?」と質問することが、そのきっかけになるのかもしれません。「ドリハラ」という言葉を初めて知って、そんなことを考えてしまいました。

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