2020/3/30
前回の記事「社会歴史研究部活動報告 ~杉戸町から考える民主主義②~」の続きです。
6.マジョリティージャッジメントでやってみると?
マジョリティージャッジメントとは、様々な政策に対し、「良い」「非常に良い」「悪い」「非常に悪い」のいずれであるか?を問う方式です。そして、通常の4択の多数決と違い、全体の中でも「真ん中」を全体の意見とします。
例えば、有権者が9人いて、「非常に良い」が2人、「良い」が2人、「悪い」が2人、「非常に悪い」が3人だった場合、以下の図で、真ん中の人(左から5人目の◎の人)の意見である「悪い」が、有権者9人全体の意見となります。
≪参考文献 坂井豊貴『多数決を疑う 社会的選択理論とは何か』岩波新書、2015年≫
今回、様々な政策を生徒たちが設定し、4択で質問してみました。以下がその結果です。
非常に良い | 良い | 悪い | 非常に悪い | 政策の評価 (真ん中) |
|
憲法9条に「自衛隊」明記 | 171人 | 500人 | 240人 | 159人 | 良い |
米軍基地を縮小 | 221人 | 621人 | 174人 | 46人 | 良い |
原発再稼働 | 76人 | 339人 | 370人 | 275人 | 悪い |
年金制度を充実 | 414人 | 540人 | 103人 | 24人 | 良い |
子育て支援を充実 | 492人 | 532人 | 39人 | 12人 | 良い |
最低賃金を引き上げ | 454人 | 539人 | 67人 | 17人 | 良い |
消費税率を引き上げ | 86人 | 425人 | 363人 | 202人 | 悪い |
自由貿易を推進 | 134人 | 624人 | 237人 | 54人 | 良い |
民営化や規制緩和 | 148人 | 703人 | 150人 | 27人 | 良い |
金融緩和政策 | 130人 | 701人 | 164人 | 26人 | 良い |
地方分権の推進 | 184人 | 724人 | 110人 | 15人 | 良い |
外国人労働者の受け入れ拡大 | 111人 | 544人 | 328人 | 67人 | 良い |
同性婚を認める | 165人 | 583人 | 209人 | 90人 | 良い |
夫婦別姓を認める | 182人 | 611人 | 192人 | 63人 | 良い |
NHK放送をスクランブル化 | 155人 | 580人 | 207人 | 50人 | 良い |
安楽死を認める | 195人 | 624人 | 160人 | 55人 | 良い |
※ 考察
・原発に対する反対意見が60%を超えた。福島の事故以来、原発の信頼が下がっているのかも。
・最低賃金の引き上げは好印象。90%は今の賃金に不満を持っているのかも。
・消費税の引き上げは、賛成と反対が半々。他の社会問題よりも認知されており、世間の関心が高いことがわかる。
・NHK放送のスクランブル化など世間的に認知度が低い社会問題は、なんとなく「良い」を選択しているのでは…。
・全部「良い」にしているアンケート用紙がけっこうありました。よく考えた結果ではないかもしれません…。
7.まとめ(理想の決め方とは)
●様々な選挙制度の比較
a.現行の制度
・開票の手間がかからず、やりやすい
・誰からでも理解しやすい単純な多数決である。
・立候補者が3人いたとして、多くの人から支持されるA氏とB氏で票の奪いあいをした結果、
支持者の少ないC氏が当選することもありえる。すると死票が多くなる。
・国民の多くが「ある政党が掲げるDという政策は支持しても、Eという政策は支持していない」と考えていても、
その政党が与党となれば、望んでいないEという政策が採用されてしまう。
b.ボルダルール
・大胆な改革を起こすことが困難なため、安定した政治が続く。
・好む人だけでなく、好まない人の多さも重視する制度のため、現行制度より死票が少なくなる。
・良くも悪くも思っていない人が多い政党が躍進しやすい。好悪がはっきり分かれる政党は、議席を減らしやすい。
・国民が各政党の政策を理解していない場合、吟味せずに政党を選んでしまうことがありえる。
c.マジョリティ・ジャッジメント
・政策ごとの賛否を決めるには最適である。
・民意が細かく反映されやすい。
・与党にお任せしている状況を変えられる。
・争点をいつ誰がどう設定するかを決めないといけない。決めるのは国会か?
・聞くことが多すぎて複雑。
●社会歴史研究部の提案!
より民意を反映するためには、課題は残るものの、ボルダルールやマジョリティジャッジメントを導入してもよいと考えます。
そして電子投票やマークシートを導入し、マイナンバーによって本人確認をし、投票者や集計の手間を少なくすることを提案します。
そこで考えてみた! 理想の投票用紙はこれだ!!
<社会歴史研究部が提案する投票用紙>
1.以下の政党について、投票したい順位をつけてください。 | |
1位 2位 3位 4位 5位 | |
ア ○○○○党 | ○ ○ ○ ○ ○ |
イ □□□□党 | ○ ○ ○ ○ ○ |
ウ △△△△党 | ○ ○ ○ ○ ○ |
エ ☆☆☆☆党 | ○ ○ ○ ○ ○ |
オ ◇◇◇◇党 | ○ ○ ○ ○ ○ |
2.以下の政策について どの程度良いまたは悪いと考えるかを1つマークしてください。 | |
とても良い 良い 悪い とても悪い | |
ア 憲法第○条を「*******」に変える。 | ○ ○ ○ ○ |
イ 消費税率を引き上げる。 | ○ ○ ○ ○ |
ウ 原子力発電の割合を減らす。 | ○ ○ ○ ○ |
エ 同性婚を認める。 | ○ ○ ○ ○ |